Ｑ５：本作は音楽も、とてもイーオンの世界観にぴったりあっていると思います。叙情的すぎない、ドラマチックすぎないところが。音楽を担当した人物はどのように探したのですか？
			音楽は私の親友のドリュー・ニューマンに作曲と演奏をしてもらいました。彼とはカルアーツ（カリフォルニア・インスティチュート・オブ・アーツ）で共にアニメーションを学んだ仲なんです。その経歴のおかげで、彼はアニメーションという媒体を非常によく理解し、尚且つ映像の補足となるような音楽を作り出すことが出来るんです。彼の音楽のおかげで、聞き慣れたテーマ曲や定石を使わずに細かい感情を呼び出せるようになったんです。全てオリジナルで、特徴的。曲は全て、映像を作り終えてから作られました。ドリューは映像を見てから内容に合う音楽を作ったんです。
			Ｑ６：ヒロインのイーオン・フラックスはとても魅力的な登場人物です。彼女の先祖として意識した映画史上のキャラクターはいますか？
			イーオン・フラックスを生み出すきっかけとなったキャラクターは、特にいませんでした。一般的に、私は悪女キャラに魅かれるんです。例えば、「００７／ゴールドフィンガー」のプッシー・ガロアや「バーバレラ」の黒の女王（ジェーン・フォンダではなくアニタ・パレンバーグ）、あとは「眠れる森の美女」の魔女なんかですね。60年代の「バットマン」に出てきたジュリー・ニューマーのキャットウーマンもそうかもしれません（始めてイーオンを書いたのは1989年―「バットマン リターンズ」以前）。こういう女性を補助的な役柄として描くのではなく、その女性キャラに焦点を当てているような映画を見たいですね。でも、女性を脇役として描く方が典型的ですけど。
			Ｑ７：イーオンの魅力には優れた戦闘能力もありますが、性格設定のユニークさも大きな魅力です。クールで自分勝手なところが普通のヒロインとは大違いです。そのうえ、敵であるトレヴァーに惹かれてしまったら、その気持ちを否定せずに、その気持ちをうまくハンドリングしていくところが魅力的だと思います。このイーオンの性格はどのようにして決めていったのですか？
			イーオンの性格に関しては、傷つきやすい面も持ち合わせた力強いヒロインというものでした。しかし、実際のところ、彼女は不安感情や不安定さや欲望など普通の情緒的能力を持つただのひとりの人間なんだと思います。多くの望みや性的幻想、暴力的な傾向を発揮する道を選び、そのために武器（や衣類）を身に着けている。彼女が選んだ職業は、彼女の内在的な性格特性が導き出したものなんです。でも、そんな彼女の極限体験が、見返りとして荒々しい精神を彼女に植え付けることになるんですよ。
			Ｑ８：イーオンの宿敵、トレヴァー・グッドチャイルドにはモデルがいますか？年齢も若くはないものの何歳なのかはっきりしないのは意図的なものですか？独裁者ではありますが、それよりもマッド・サイエンティストであることと、子供っぽいほど何かに夢中になるところが、より印象に残ります。
			トレヴァーには特にモデルはいません。彼はただ単純にこの世で最も力のある人物なんです。私の考えでは、結局のところ、革新技術を発明した科学者は、政治家なんかよりよほど社会に多大な影響を及ぼすと思っているんです。科学者は、それ故に危険人物やより重大な脅威になり得るということなんですよ。だから、巧みな科学技術と偉大な政治家の統率力を結び付ければ、イーオンに打ってつけの敵対者を作り上げる事ができると思ったんです。それに、トレヴァーを知的にするとなると、イーオン自身も頭の切れる性格でなければならない。知的な登場人物を書くのは、頭の悪いのを書くよりはるかに難しいんですよ。トレヴァーの発明が人々の生活を改善させられたという事実は、権力に心を奪われたただの暴君として彼を描くのではなく、“善”の部分も確立して描くためには重要だったんです。